実務実習と多職種連携教育は大いに役立った
2022.3.11(取材日:2021.8.24)
特定医療法人生仁会
須田病院 薬剤部
沖村 里咲
Risa Okimura
6年制薬学部では臨床能力を身につけることを目的に5年次に病院と薬局においてそれぞれ2.5カ月間の実務実習を行っています。ここでは6年制薬学部の卒業生である須田病院薬剤部の沖村里咲氏に現在の仕事や薬学部で学んだことについて伺いました。
薬学部に進学した理由を教えてください。
小さい頃から喘息の治療を受けていたため、医療職の方と接する機会が多かったのですが、その方の働く姿を見て、世の中の役に立てる仕事に就きたいと思うようになりました。もともと理科や数学が好きだったので、得意科目が生かせる薬学部に進むことを決めたのです。
現在はどんな仕事をされていますか。
卒業してからは岐阜県高山市にある精神科単科病院で勤務しています。院内で処方された薬の調剤や、患者のベッドサイドで服薬指導などを行っています。薬剤師の人数の都合で、総合病院に勤務している薬剤師のように病棟に常駐することは難しいですが、入院時には患者の持参薬をチェック、退院時には自宅に戻っても切れ目なく治療が行えるように生活状況に合わせた服薬指導を行っています。
また、精神科単科というと精神科の薬しか取り扱っていないかと思われるかもしれませんが、治療されている患者の中には、糖尿病や高血圧症といったように複数の疾患をもっている方も少なくありません。精神科の治療はもちろんのこと、他の疾患の治療薬の知識も必要です。その意味では大学のカリキュラムに組み込まれている実務実習で学んだことは今でも生かされています。私が行った実習先の病院は、さまざまな診療科の患者に対応する方針だったので、疾患ごとの検査値の見方や治療方法、治療薬の知識について実践を通して学ぶことができました。
実務実習が大いに役立ったのですね。
病院と薬局の臨床現場を卒業前に経験しておくことは、医療の全体像を把握できることはもちろんのこと、医師や看護師といった他の職種の役割や、患者あるいはその家族の治療に対する意識を知るうえで不可欠だと思います。また、自分の現状の能力を確認することができますし、薬剤師としてやりたいことが明確になって来るのも実務実習があるおかげだと思います。4年制を卒業した薬剤師と6年制を卒業した薬剤師の違いがあるのもそのあたりが関係しているかもしれません。
大学時代に印象に残っている授業を教えてください。
臨床現場で活躍できる薬剤師を養成するために、各大学では特徴的な授業が実施されています。特に近年の医療は、患者を中心とした多職種連携が重要だと言われており、大学でも医学生、薬学生、看護学生が一堂に会する多職種連携教育が行われています。私が在籍していた大学でも多職種連携教育があり、授業を通して他学部の学生と交流する中でどのようなことを学んでいるのかを知ることができました。例えば、医学生には、薬の相互作用や副作用といった薬理の講義の時間が思っているよりも少ないことに気づかされたことがありました。医師だからと遠慮して薬剤師が薬について情報提供しないと、よりよい治療をすることができません。他の職種を理解することは、臨床現場に大いに役立つと思います。
今後の目標を教えてください。
卒業した時から、将来的に大学の臨床教員になりたいと思っていました。大学の授業には、臨床薬学とつく科目はありますが、臨床経験が豊富な教員が少ないため、薬剤師のタイムリーな情報を得にくかった印象があります。臨場感ある情報を学生に伝えることで、学生の進路の選択が広がると思うのです。私自身も学生時代は薬局や病院に足を運んだり、お話を聞いたりして、現場の情報を収集していました。
大学の教員になるためには、いくつかのハードルがありますが、一つひとつ課題をクリアして若い世代に薬剤師の魅力を伝え、薬剤師の面白さに気づいてもらえたらうれしいですね。
プロフィール
特定医療法人生仁会
須田病院 薬剤部
沖村 里咲(おきむら りさ)
2019年名古屋市立大学卒業後、岐阜県高山市の単科精神科病院である特定医療法人生仁会須田病院に入職し現在に至る。