一般社団法人薬学教育評価機構

在宅医療を通じ、他職種と情報共有の在り方を臨床現場で学べたことは大きな自信になった

2022.3.11(取材日:2021.8.26)

阿部 卓巳
Interview

株式会社かくの木
かくの木薬局新堀店

阿部 卓巳

Takumi Abe

6年制薬学部では臨床能力を身につけることを目的に5年次に病院と薬局においてそれぞれ2.5カ月間の実務実習を行っています。ここでは6年制薬学部の卒業生であるかくの木薬局新堀店の阿部卓巳氏に現在の仕事や薬学部で学んだことについて伺いました。

薬学部に進学した理由を教えてください。

 兄が薬学部にいたのですが、授業のことや薬剤師のことを聞いて、少し格好いいなと思い薬学や薬剤師に興味を持ち薬学部に進学しました。薬学部に入学して、薬剤師としての自覚を持ち始めたのが、5年次で行われている実務実習を受けてからです。

現在の仕事の内容を教えてください。

 薬局と言うと、処方箋を持っていって、薬をもらうところとイメージされる方が多いかと思いますが、当店はほかの薬局と違って通院困難な患者を対象にした在宅医療がメインの薬局です。その際に患者や家族から薬や普段の生活状況などを聞き取り、それに基づいて服薬指導をします。患者の生活スタイルや家族構成などはさまざまです。それに合わせた指導が必要になります。
 また訪問時に体調変化や薬が服用できていない等、往診時からの状況変化があれば、医師に情報提供して、処方を変更することを提案することもありますし、反対に飲み忘れが多い場合はクリニックや訪問看護師、ヘルパーなどその患者さんに関わる医療従事者から薬の管理方法について検討して欲しいと依頼されることもあります。在宅医療は病院のように医療者がいつもそばにいません。患者本人のみの独居というケースも少なくありません。特に終末期の患者の場合、日に日に体調が変化するので、こまめな情報共有が必要です。
 訪問は毎日1人で10~20件、店舗全体では30~40件近い件数を回っています。世代は子供から高齢者まで幅広く対応しています。大学時代から在宅医療に取り組みたかったので、充実した毎日を過ごしています。

早くから在宅医療に取り組みたかったそうですが、大学時代に転機となることがあったのですか。

 もともと在宅医療には興味がありました。実際に仕事として在宅医療に取り組みたいと真剣に考えるようになったのは、研究室の先生の在宅訪問に同行したことがきっかけです。薬剤師が配薬するだけの訪問だけでなく、クリニックの医師の往診同行もしました。大学では今後の薬局のあり方を研究するために、大学の附属薬局で在宅医療にも取り組んでいました。研究室に配属される前の4年生や5年生の実務実習のない時期に同行しました。先生が患者と接している姿を見て、患者に寄り添う身近な薬剤師像があり、自分もそのような患者に身近に感じてもらえる薬剤師を目指したいと思いました。

6年制薬学教育ならではの話ですね。そのほか大学で印象に残っていることはありますか。

 やはり5年生の時に行われる実務実習です。実習先の薬局でも在宅訪問に同行することがあって、患者とのコミュニケーションの取り方や、医師、訪問看護師、ケアマネジャーとの情報共有のあり方などを臨床現場で学べたことは大きな自信につながりました。

反対に大学時代に学んでおけばよかったことを教えてください。

 高齢者の方と話す際は、薬のことだけでなく、日常生活の話もするのですが、自分が昔のことを知らないと会話がうまく成立しないことがあるので、薬学だけでなく幅広い知識を知っておいたほうがよかったと感じます。

薬剤師としてやりがいを感じることは?

 初めのうちは、患者はなかなか心を開いてくれませんが、継続して関わっていくうちに、「いつも来るのを楽しみにしていた」「話していると元気が出る」といった言葉を頂いた時にはこちらも嬉しく感じますし、薬剤師冥利に尽きると思えます。

今後の目標を教えてください。

 当店では、医薬品や健康食品、食事や衛生指導、介護などについてアドバイスを行う健康サポート薬局の届け出も出しています。在宅医療だけでなく、薬局内の業務にも力を注ぎ、地域の皆さんに必要とされる薬剤師を目指していきたいと思います。

プロフィール

阿部 卓巳

株式会社かくの木
かくの木薬局新堀店

阿部 卓巳(あべ たくみ)

2011年城西大学卒業後、かくの木薬局に入社。3年目の時に現在のかくの木薬局新堀店へ異動。現在に至る。