一般社団法人薬学教育評価機構

恩師の言葉を胸に臨床研究に取り組む

2022.12.5(取材日:2022.9.29)

笠原 恵太
Interview

株式会社ウェルビッグ
だいちゃん薬局

笠原 恵太

Keita kasahara

薬剤師には病院、薬局といった臨床のほか、製薬企業や行政といったようにさまざまなステージがある。ここでは6年制薬学部の卒業生である「だいちゃん薬局」(大阪府河内長野市)の笠原恵太氏に薬局の仕事や薬学部で学んだことについて伺いました。

薬学部に進学した理由を教えてください。

 子供の頃にドラマ『Dr.コトー診療所』の中で描かれている離島医療に情熱をかける青年医師の姿を見て、私も人の命を救う職業に就きたいと思い、薬学部に進学しました。

現在はどんな仕事をされていますか。

 薬局で調剤する外来や、患者さん宅へ行って患者さんの服薬管理をする在宅医療のほか、今年度から河内長野市薬剤師会の理事を務め、薬剤師会の活動にも取り組んでいます。
 薬局薬剤師の行う在宅医療は、退院後も円滑に治療が行えるように病院、地域のクリニックや訪問看護ステーションの医療者が一同に会する退院時カンファレンスの場に参加したり、初回の訪問時にクリニックの医師の往診に同行したりして、患者さんの情報を共有します。また、ケアマネジャーがケアプランを決める会議にも参加し、訪問看護師やヘルパーと協力し、患者さんの服薬状況が悪くなることが想定される場合は、薬の管理の方法の提案や、必要に応じて服薬回数を減らすための方策を立てます。このように在宅医療ではさまざまな職種と関わることが特徴です。

在宅医療でどんなことに心がけていますか。

 患者さんが自分の家でどのように過ごしたいかを第一に考えています。薬の管理の状況や患者さんの状態を踏まえて、必要ないと思われる薬は減らすことを意識しています。患者さんからも薬の数が減ると喜ばれますね。薬で体の状態をコントロールすることは重要なことですが、その数が多すぎると高齢者の場合、食欲がなくなることも少なくありません。豊かな生活を送るためには食事をとることは欠かせません。少しでも食事をとってもらうために、薬の数や飲む回数を減らすように医師に代替薬や減薬の提案をしています。ただし急に薬が減ると、患者さんは不安になるので、しっかりとコミュニケーションをとって患者さんに納得していただかないといけません。一方で、あまり食事や水分摂取が少ない患者さんには、少しでも食事や水分をとるキッカケになるように1日の服用回数を増やすような提案をすることもあります。

大学生活で印象に残っていることはありますか。

 5・6年次の卒業研究です。自分で実験のスケジュールを立てたり、実験結果の予想をしたりすることが楽しかったですね。大学の時にある先生から聞いた「科学者は薬剤師でなくてもいいが、薬剤師は科学者でなければならない」という言葉が印象に残っています。薬剤師会では、新型コロナウイルスワクチンの市の集団接種に薬剤師を派遣したり、市内の全薬局でワクチン接種前の予診票の記載のサポートを行いました。この独自の取り組みをまとめれば、何か発信できるのではないかと思い、母校の先生と協働して最終的に論文を発表することができました。

どんなことを学生時代に学んでおけばよかったと思いますか。

 在宅訪問をやり始めた頃、理学療法士が来ると患者さんから聞いたとき、理学療法士がどんなことをしているのか想像がつかなかったことがありました。学生時代に他職種の役割を学んでおけばよかったと思います。

将来どんな薬剤師になりたいですか。

 薬局の外に出て、地域の中で薬剤師の知識を生かし、地域住民の健康生活をサポートしていきたいですね。その一つが学校薬剤師です。定期的に学校を訪問し、水道やプールの水質検査、教室内の空気や照度検査など、学校環境衛生の評価をしています。また、小学6年生を対象に薬物乱用防止教室を養護教諭と協働で実施しています。

自分の持っている知識を社会に役立たせたいという気持ちがあるのですね。最後に薬学を目指す人たちにメッセージをお願いします。

 薬剤師にはいろいろな可能性が広がっています。私はたまたま薬局に勤務していますが、友人は化粧品会社や製薬会社で働いています。病院や薬局のように患者さんに直接アプローチする手段もありますが、市場にない商品の開発に携わることも社会貢献につながります。

プロフィール

笠原 恵太

株式会社ウェルビッグ
だいちゃん薬局

笠原 恵太(かさはら けいた)

2016年薬学部卒業後、大手チェーン薬局に入社。2019年に故郷に戻り、株式会社ウェルビッグに入社。学校薬剤師や河内長野市薬剤師会理事を務め、地域住民の健康支援や地域の薬局のボトムアップなどに取り組んでいる。学術大会でのポスター発表や論文投稿を通じて薬剤師の役割を内外にアピールしている。