一般社団法人薬学教育評価機構

実務実習は自分の進むべき道を示してくれた

2022.12.5(取材日:2022.10.7)

熊野 諒太
Interview

独立行政法人 東金九十九里地域医療センター
東千葉メディカルセンター薬剤部

熊野 諒太

Ryota Kumano

6年制薬学部では臨床能力を身につけることを目的に5年次に病院と薬局においてそれぞれ2.5カ月間の実務実習を行っています。ここでは6年制薬学部の卒業生である東千葉メディカルセンター薬剤部の熊野諒太氏に現在の仕事や薬学部で学んだことについて伺いました。

薬学部に進学した理由を教えてください。

 母が看護師だったこともあり、医療の仕事は、私にとって身近な存在でした。大学進学の際、どんな仕事に就こうかと悩んでいる時に、「薬剤師を目指せば」という母の一言で薬学部に入学することを決めたのです。

現在はどんな仕事をされていますか。

 卒業してからは千葉県東金市にある東千葉メディカルセンターで、救急外来や手術等で様態が急変した患者さんを受け入れるICU(集中治療室)やHCU(高度治療室:ICUよりもやや重症度の低い患者さんを受け入れる治療施設)において専任薬剤師として勤務しています。ICUやHCUでは、刻一刻と変化する患者さんの容態に合わせて点滴薬や内服薬が処方されるため、薬の管理が重要になってきます。その役割を担うのが薬剤師です。薬物療法の有効性と安全性を最大限に発揮させるために、点滴ルート内での薬の配合変化を防いだり、内服薬の投与量を変えたりしています。
 1日1回実施しているカンファレンスや病棟では、腎機能の検査結果や病態の変化に基づいて医師に処方提案したり、新しい治療が始まった際は看護師から「どのルートから投与しますか」というような相談を受けたりします。病棟に常駐しているので、医師や看護師とのやり取りはかなり多いです。また、当院では、プロトコールに基づく薬物治療管理(PBPM)を導入し、薬剤師が医師に代行して処方オーダする取り組みも行っています。

積極的に薬物療法に介入して患者さんの治療に貢献しているのですね。

 薬剤師が処方提案して、その内容が治療に反映され患者さんの症状が良くなる。自分が学んだことが患者さんの治療に生かされることって、素晴らしいことだなと思います。実務実習でも医師との意見交換で治療が変わるのを目の当たりにし、自分もそんな薬剤師になりたいと思い、病院を選んだのです。薬理学や病態学の授業は好きでしたが、私にとって実務実習は自分の進むべき道を示してくれるものでした。

実務実習が大いに役立ったのですね。反対に大学でやっておけばよかったことがあれば教えください。

 多くの病院薬剤師が思うことですが、抗菌薬の適正使用についてです。抗菌薬を不適切に使うと、その抗菌薬が将来効かなくことがあり、世界中で抗菌薬の効かない耐性菌が増加していることが問題になっています。
 大学によるかもしれませんが、私の大学時代は抗菌薬の作用機序や分類を中心に学びました。ある細菌に対して数ある抗菌薬の中からどの薬剤を選択するのか、といったことは臨床現場に出てからやってきたことなので、大学時代に抗菌薬や微生物の特徴についてしっかり勉強しておけばよかったなと思います。

薬剤師としてのやりがいは何だと思いますか。

 医師の治療方針を理解し、それに沿った薬学的介入あるいは処方提案をしていく。治療に深く関わることができることがやりがいですね。そういった責任ある環境に身を置くことで、自分自身もさらに一つ上のステージに立てるのではないかと思っています。

今後の目標を教えてください。

 社会人になる前からの目標ですが、他職種や患者さん、身近な人から頼りにされる存在になることです。それが私の薬剤師像です。そうなるためには、知識や技能を身につけることはもちろんのこと、相手の気持ちに寄り添ったコミュニケーション力も磨いていきたいと思います。

プロフィール

熊野 諒太

独立行政法人 東金九十九里地域医療センター
東千葉メディカルセンター薬剤部

熊野 諒太(くまの りょうた)

2019年薬学部卒業後、東千葉メディカルセンターに就職。1年目は、中央業務に加え一般病棟の病棟薬剤師として患者さんの声を聞きながら薬物治療の業務に携わりました。
2年目から現在まで、ICU/HCUの集中治療の病棟薬剤師として配属され1年目からの経験も踏まえ日々、急性期治療を中心に学ばさせて頂いてます。現在は、より的確な治療介入ができるように勉強しその中で、抗菌化学療法認定薬剤師及び救急認定薬剤師の資格取得を目指しています。