一般社団法人薬学教育評価機構

大学での学びを臨床で生かす

2022.12.5(取材日:2022.10.24)

笹川 嵩孔
Interview

株式会社大賀薬局

笹川 嵩孔

Takayoshi Sasagawa

薬剤師には病院、薬局といった臨床のほか、製薬企業や行政といったようにさまざまなステージがある。ここでは、6年制薬学部を卒業し、福岡県を中心に店舗展開する大賀薬局に就職した笹川嵩孔氏に、調剤薬局薬剤師の仕事や薬学部で学んだことについて伺いました。

薬学部に進学した理由を教えてください。

 中学・高校の個人課題研究という科目で論文を書く機会がありました。当時、医療業界に注目していて、文献を探している時にある書籍に書かれていた「医師は、1日に患者をみる数は限られているが、医薬品が1つ開発されれば、多くの患者を救うことができ、人類に大きな貢献ができる」という言葉に感銘を受け、それ以来、医薬品の開発に携わりたいと思い、薬学部を目指すようになりました。
 入学してからは大学院を視野に入れて勉強していましたが、5年次の実務実習で、臨床で働く薬剤師の姿にあこがれを持つようになり、臨床に進むことを決意したのです。

現在はどんな仕事をされていますか。

 福岡県を中心に調剤薬局やドラッグストアを展開している大賀薬局の「大賀薬局天神ビル店」で薬局長として勤務しています。2022年10月からは近隣の店舗の薬局長を束ねるブロック長も兼任しています。
 薬局では近隣の病院薬剤部と連携して、がん治療を受けている患者さんへの服薬指導後のフォローを行っています。がん治療に使われている薬は副作用が発現する時期が分かっているため、副作用の発現する頃に患者さんに電話をして副作用の状況を確認したり、治療で気になっていることを聞いたりして、その情報を病院薬剤師にフィードバックして、次回の診療に役立ててもらいます。

ブロック長も兼任しながら、現場の薬剤師として意識しているのはどんなことですか。

 近年、薬局は複数の医療機関を受診している患者さんに対して、同じような効果のある薬が重複して処方されていないか、あるいは多くの薬を服用している患者さんに対して、副作用を起こす危険性はないか、といった対応をすることが求められるようになりました。1つの薬局が患者さんの薬の状況を把握していればそういった問題は解消されます。一般的に「かかりつけ薬剤師」といわれるものですが、患者さんからかかりつけ薬剤師になってほしいと思われるには、高度な知識やスキルが必要になってきます。現場の薬剤師がかかりつけ薬剤師になれるように、自分の経験などを交えながら指導しています。

大学の学びで今の仕事に生かされていることは何ですか。

 薬学部は、基礎から実務まで幅広い科目がありますが、病態生理学、薬物動態学、薬理学といった薬剤師の知識のコアとなる科目は臨床で役立っています。同じ薬を服用しても併用している薬があったり、持病を持っていたりすれば、副作用が出たり、作用の仕方が異なったりすることがあるため、医師が処方する際、どの医薬品が望ましいかと意見を求められます。その際、大学で学んだ知識を駆使して、適切な医薬品を提案しています。私は入社して5年目ですが、以前に比べ、薬剤師に意見を求めてから処方を決める医師が年々増えている印象があります。

大学生活で印象に残っていることはありますか。

 大学で募集していたプログラムや学生団体が主催するプログラムに参加し、海外の学生や教員と交流を図っていました。その中で特に印象に残っているのが、アメリカの薬局薬剤師の役割です。日本の医療制度と異なり、すべての人が医療保険に加入していないため、病気やけがをしたときにまずは薬局に相談するという慣習があるため、アメリカでは、薬剤師の仕事は大きな責任があり、それと同時にみんなから尊敬される存在でもあります。その話を聞いてから薬局に就職したい気持ちが大きくなりました。

将来、どんな薬剤師になりたいですか?

 薬物治療が進んでいる間、患者さんの状態を常にチェックし、問題があれば医師に処方を提案して改善していくことが薬剤師の役割の一つです。薬物治療を総合的にメンテナンスしていくといったイメージでしょうか。それがどこの薬局でもできる環境をつくっていきたいと思っています。

最後に高校生に向けてメッセージをお願いします。

 人々の健康に関われる仕事に就けるのは素晴らしいことだと思います。その一方で、患者さんや地域の方を幸せにするには、大学を卒業してからも学び続けることが必要です。患者さんや地域の方の人生に貢献したいと思っている人は薬剤師を目指してほしいですね。

プロフィール

笹川 嵩孔

株式会社大賀薬局

笹川 嵩孔(ささがわ たかよし)

2018年福岡大学薬学部卒業後、株式会社大賀薬局に入社する。薬局薬剤師として他職種と連携を図りながら患者さんの薬物治療に貢献する。2020年に「大賀薬局天神ビル店」の店長に着任。2022年からは営業2課第9ブロック長も兼任し、近隣の店舗の薬剤師の育成にも携わっている。